「昭和の遺物」になりたくなかった。60歳を前に私が見つけた、部下との「心の置き場」

「もう、自分は職場にとって『いないも同然』の存在なのだろうか」ーー。

そんな静かな焦燥感が、最近の私の胸を締め付けています。 世代間ギャップという言葉で片付けるには、あまりに寂しく、そして切実な悩み。皆さんは、職場の部下や年下世代との距離をどう感じていらっしゃいますか?

私はまもなく60歳を迎えようとしています。15人ほどの職場で、私と同世代はわずか4人。数で言えば、いつの間にか圧倒的なマイノリティーになりました。残りのメンバーは30代後半から40代。彼らの何気ない雑談に耳を傾けていても、話題も、興味も、出来事に対する捉え方も、自分とは根本から違うのだと痛感する毎日です。

「昭和」の背中が、部下の口を閉ざさせていた

先日、部下が提出した資料にミスがいくつも見つかりました。 「なぜ、出す前に確認してくれなかったのか」と苛立ちが募ります。しかし、その言葉を口に出すことはできませんでした。

以前、同じような場面で注意したときのことです。部下は「はい」とだけ答え、それ以来、二度と私の元へ質問に来なくなってしまったのです。私は「昭和」の時代から、怒鳴られ、厳しく揉まれながら仕事を覚えてきました。しかし、そのやり方は今の部下には通用しなかった。

「自分のやり方が悪かったのかもしれない」 その反省は、いつしか「自分は『話しかけづらい上司』なのではないか」という深い不安に変わりました。このままでは、自分が積み上げてきたスキルも知識も伝わらず、チームの成果も上がらない。そんな危機感が私を動かしました。

空回りした若者ノリと、一往復で終わる「最近どう?」の虚しさ

私はネットで「コミュニケーション能力を向上させる方法」を必死に検索しました。出てきたテクニックを、藁にもすがる思いで試してみたのです。

例えば、「笑顔で輪の近くに立つ」という手法。 若手社員たちが楽しげに談笑しているすぐそばで、私は自分のデスクに座り、必死にPCを叩く「忙しいフリ」をしながら、聞き耳を立ててみました。ネットには「まずは存在を身近に感じさせろ」とあったからです。

しかし、心は緊張でガチガチでした。顔だけはいつでも会話に加われるよう無理やり口角を上げてみましたが、目は画面を凝視したまま。部下から見れば、「猛烈な勢いでキーボードを連打しながら、背後で不気味にニヤついている上司」という、怪しさ満点の姿だったはずです。結局、誰一人として私に声をかけることなく、彼らはスッと散っていきました。

さらに、意を決して放った「短い一言でボールを投げる」というテクニックも、私にかかれば惨敗でした。 「さっきの会議、どう思った?」と、自分なりに精一杯のパスを出す。けれど、部下から「……特にはないです」と素っ気なく返されると、もう次の言葉が出てきません。気まずい沈黙に耐えきれず、結局「俺たちの若い頃はもっと……」と、聞かれてもいない武勇伝を自分から語り出す始末。

空気を凍らせ、余計に距離を広げてしまう。小手先のテクニックを使えば使うほど、鏡に映る自分の「滑りっぷり」が情けなくて、溝は深まっていくようでした。

心理学で知った「ラポール」という魔法。形より先に必要なもの

行き詰まっていた私を救ってくれたのは、ある心理学の記事でした。 そこに書かれていたのは、言葉のテクニックよりも先に「関係性の構築」が必要だという教えです。

相手と心が通じ合い、信頼し合っている状態を「ラポール」と呼ぶこと。そして、その土台があって初めて、メンバーがミスを恐れずに発言できる「心理的安全性」が生まれるということ。

世界中の企業で取り入れられているというその理論を読み、私はハッとしました。私は「どう話しかけるか」ばかりを気にして、部下が「安心して話せる土台」を作ることを忘れていたのです。

結論:私は今日から、ただ「機嫌のよい人」でいようと思う

心理学を独学ですべてマスターするのは難しいかもしれません。でも、一つだけ確信したことがあります。人間は「似ているもの」に安心し、相手の反応を「予測」しながら動く生き物だということです。

ならば、私が今すぐできることは何か。 それは、「職場において、常にリラックスして機嫌の良い人でいること」。ただそれだけです。

「それだけ?」と思われるかもしれません。しかし、上司が常に機嫌よく、感情が安定していれば、部下は「今、話しかけても大丈夫だ」と予測できます。その安心感こそがラポールを築き、心理的安全性を高める第一歩になるはずです。

職場の方向性とゴールだけはしっかりと示し、あとはリラックスして見守る。 定年までの残り少ない時間、「機嫌のよい上司」として、もう一度チームと一緒に歩んでみようと思います。

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