「あれ、おかしいな?」散歩道で感じた小さな疑問

最近、散歩コースが変わりました。
以前はのどかな田園風景だった場所に、青いパネルがずらりと並んでいます。太陽光発電所ができたんですね。「環境にいいことだから」と思いながら眺めていたのですが、ふと疑問が浮かびました。
「これ、雨の日や夜はどうなるんだろう?」
単純な疑問でした。でも、この小さな「?」から、意外な発見の旅が始まったんです。
テレビでは「2030年度46%削減」「2050年カーボンニュートラル」といった言葉をよく耳にします[1]。固定価格買取制度のおかげで、ご近所でも屋根に太陽光パネルを載せるお宅が増えました。
ところが、2021年1月の寒い日のこと。電力需給ひっ迫警報というものが出ました。太陽光発電は雪で覆われ、風力も風が弱くて…結局、古い火力発電所まで動員して停電を防いだそうです[2]。
「あれ?再生可能エネルギーって、もっと頼りになるものだと思っていたけど…」
そんな素朴な疑問から、いろいろ調べてみることにしました。
調べてびっくり!日本の「脱炭素装置」の8割が○○製だった



調べてみると、面白いことがわかりました。
日本の太陽光パネル、実は約8割が中国製だそうです。経済産業省の資料にそう書いてありました[3]。蓄電池も約7割が中国・韓国製[4]。
「脱炭素で日本の技術力を!」というイメージがあったので、ちょっと意外でした。
もっと驚いたのは、規模の話です。環境省の試算によると、日本が温室効果ガスを半分に減らしたとしても、中国の排出量の1%にも満たないんだそうです[5][6]。
まるで、大きなプールに小さなコップで水を注いでいるような感じでしょうか。
でも、だからといって意味がないわけではありませんよね。小さな石でも、水面に投げれば波紋は広がります。
実際、G7広島サミットでは、日本が脱炭素とエネルギー安全保障の両立について議論をリードしたそうです[11]。世界から信頼されているということでしょうか。
一方で、気になることもありました。
静岡県伊東市や山梨県北杜市では、太陽光発電の建設に関して地域の方々が心配されているようです。森林が伐採されたり、雨が降ると濁った水が流れたりするケースもあるとか[7]。
環境のための設備が、別の環境問題を起こしているのは、なんだか複雑な気持ちになります。
農林水産省の調査では、営農型太陽光発電の約3割で農業の継続に課題があることも報告されています[7]。「農業と発電の両立」という理想と現実のギャップがここにもあるようです。
それでも日本にしかできない「本当の貢献」がある理由



温室効果ガスの問題は、確かに地球全体の課題です[8][9]。
IPCC(気候変動に関する政府間パネル)の最新報告書でも、気候変動が人間活動の影響であることが明確に示されています[8]。
ただ、国連環境計画の報告を見ると、現在の各国の目標を全て達成しても、1.5℃目標には届かないそうです[8]。
日本一国だけの努力では限界があるということでしょう[10]。
でも面白いのは、日本の省エネ技術は世界トップクラスで、同じGDPを生み出すのに必要なエネルギーが、中国の約3分の1、インドの約5分の1だということです[10]。
JICAを通じた技術協力で、ベトナムの火力発電所効率化プロジェクトでは年間約100万トンのCO₂削減を実現したそうです[11]。これは国内の小規模な再エネプロジェクト数十件分に匹敵するとか。
案外、技術移転の方が効果的なのかもしれませんね。
経済産業省の「アジア・エネルギー・トランジション・イニシアティブ」では、アジア各国の実情に合わせた脱炭素移行を支援しているそうです[11]。
一律に「再エネだけ」ではなく、それぞれの国の事情を考慮したアプローチ。実用的で現実的な感じがします。
利用率14%の太陽光発電…これって効率的?



電力広域的運営推進機関のデータを見て、また驚きました[13]。
太陽光発電の設備利用率は約14%、風力発電は約20%だそうです[13]。つまり、年間を通して見ると、実際に発電しているのは2~3ヶ月程度の計算になります。
お料理で例えると、塩だけで味付けしようとしているような感じでしょうか。醤油も味噌も、それぞれの良さがあって、バランスよく使うから美味しくなる。
資源エネルギー庁の第7次エネルギー基本計画では、2030年度の電源構成として、再生可能エネルギー36~38%、原子力20~22%、火力41%という組み合わせが示されています[1][15]。
これは理想論というより、電力の安定供給と経済性、環境性を総合的に考えた結果のようです[12]。
地域の特性も面白いですね。九州は地熱発電、北海道は風力発電、沖縄は太陽光発電[14]。でも、九州の電気で東京の電力需要を賄うのは、送電の問題で難しいそうです。
そんな中、日本原子力研究開発機構では高温ガス炉の研究が進んでいるそうです[15]。三菱重工業や日立製作所などの企業も、小型モジュール炉(SMR)の開発で注目されているとか[16][18]。
選択肢は多い方が良いのかもしれませんね。
原子力アレルギーの私でも「これなら…」と思えた小型炉の話
SMR(小型モジュール炉)やMSR(溶融塩炉)という技術があることを知りました[16][17]。
「原子力」と聞くと身構えてしまいがちですが、従来のものとは大分違うようです。
小さくて、工場で作って現地で組み立てる。まるでレゴブロックのような感じだそうです[16]。燃料効率も良くて、廃棄物も少ないとか[17]。
何より興味深いのは、日本の研究機関や企業が世界でも先進的な技術を持っているということです[18]。
もちろん、課題もあります。廃棄物の処理方法、安全規制の整備、そして何より社会の理解と合意[19]。
でも、選択肢として知っておくのは悪くないのかもしれません。
散歩道の発見から始まった「エネルギー真実探し」の結論
散歩コースの太陽光パネルを見て始まった小さな疑問。
調べてみると、思っていたより複雑で、でも思っていたより面白い世界でした。
再生可能エネルギーにも長所と短所があり、中国依存という現実があり、地球規模の課題があり、技術開発の可能性があり。
一つの答えで全てが解決するほど、簡単な問題ではないようです。
でも、だからこそ興味深い。
毎月の電気代の明細を見るとき、ニュースでエネルギー政策の話を聞くとき、少し違った視点で考えられるようになりました。
「本当にそうなのかな?」「他にはどんな方法があるのかな?」
そんな小さな疑問が、案外大切なのかもしれませんね。
散歩コースの太陽光パネルも、今は少し違って見えます。良いところも気になるところも含めて、一つの選択肢なんだと。
私たちの生活に直結する電気の話。もう少し関心を持ってもいいのかもしれません。
エネルギーの未来を考えることは、結局のところ、私たち自身の未来を考えることなのですから。
出典・参考文献
[1] 経済産業省「第7次エネルギー基本計画」 [2] 大阪ガス「エネルギーの現実と再生可能エネルギー」 [3] Canon Institute for Global Studies「太陽光パネル輸入依存」 [4] Gurilabo「蓄電池の輸入とリスク」 [5] World Energy Council「中国の製造能力とCO₂排出量」 [6] 環境省「日本の排出量と世界全体の比較」 [7] IEEJ「森林伐採と国土荒廃リスク」 [8] UNFCCC「気候変動と国際協調」 [9] Paris Agreement「国際協調の必要性」 [10] Tanso-man「日本の排出量の世界に占める割合」 [11] World Economic Forum「日本の国際信頼形成」 [12] Sustech Inc.「エネルギー自立戦略」 [13] ASUENE「再エネと安定供給」 [14] WEF Japan「分散型エネルギーの重要性」 [15] 経産省「再エネ+原子力の方針」 [16] OECD/NEA「SMRの可能性と安全性」 [17] World Nuclear Association「MSR技術の国際評価」 [18] 日本の研究機関資料「SMR/MSRの技術開発」 [19] 原子力安全委員会「廃棄物管理とリスク評価」
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