会話術の前に、相手を見る。年の離れた人とのコミュニケーションで、私が一番大事にしていること

会話術の前

年の離れた人と、何を話せばいいのか。動画や記事を探すと、会話術はほんとうにたくさん出てきます。話題の選び方とか、声のかけ方とか、最後まで聞くこととか。

どれも、まあ、表面的には納得できるんです。でも、なんだか足りない気がしました。

最初に言っておくと、これは会話のノウハウの話ではありません。

私の考えを先に書いておきます。コミュニケーションって、言葉より前に始まっているんです。相手を見たとき、もう始まっている。話が弾むことより、相手を理解することのほうが、ずっと大事だと思っています。年が離れていても、そこは同じです。

正直に言うと、私は話すのが面倒なほうです。相手のことを考えれば考えるほど、黙ってしまう。職場でも、簡単なやり取りはしますよ。でも、それ以上の会話はあまりしないんです。それでも、相手のことはよく見ています。

いつもと違う

私は長いこと、プラントの設備管理の仕事をしてきました。

毎日の巡回点検で機械の前に立つと、計器に異常はない。異音らしいものもない。なのに、なんとなくいつもと違う。そういう日があるんです。

その日は何も起きません。でも数日後、不調の兆候が出てくる。うまく言葉にできない感覚なんですけど、そういうことが何度もありました。

人も同じ

人を見るときも、これに近い感覚があります。

相手がいま何に集中しているのか。頭の中で何を考えているのか。それは顔の表情だけではない。体のあちこちに出てくるんですよね。

たとえば、体に力が入っている。肩が上がっている。動きがゆっくり。反応も遅い。目がうつろ。視線が沈みがち。ため息をつく。なんとなく暗く感じる。

逆の日もあります。動きが軽やか。力みがなく、リラックスしている。反応が早い。目が輝いている。視線が高い。なんだか明るく感じる。

一つひとつは小さなことです。でも、そういうものが合わさった時に、「今日はいつもと違うな」と感じるんです。

私はそれを感じ取った上で、何を話すかを決めています。話さない、と決めることもあります。というか、そっちのほうが多いかもしれません。

こう書くと、当たり前のことだと思われるかもしれません。たしかに当たり前です。でも、「何を話そう」と悩んでいる時ほど、人は相手を見ていない。自分の頭の中ばかり見ているんです。

年の差こそ

年が離れると、共通の話題が少ないんです。流行も違う。言葉づかいも違う。当たり前も違う。だから「何を話せばいいか分からない」となる。

でも、表情や体の動きは、年齢に関係なく出てきます。話題が合わなくても、相手を見ることはできるんです。

むしろ年の差がある相手ほど、言葉だけに頼るとすれ違いやすい。自分の当たり前で話題を選ぶと、相手の当たり前とずれるんですよね。先に相手を見る意味は、そこにあると思っています。

相手がいま集中しているものが分かれば、それがそのまま話題になります。年上の先輩の手が止まったら、そこで一言。若手が画面の前で眉を寄せていたら、「どこで止まってる?」って一言。それくらいでいいんです。

いつもを知る

いつもと違う、と気づけるのはなぜか。毎日、同じ機械を見てきたからだと思います。

人も同じです。普段の相手を見ているから、その日の違いに気づける。

そう考えると、コミュニケーションは会話の瞬間に始まるものではない。毎日相手を見ているところから、もう始まっているのかもしれません。

特別じゃない

ここまで読んだところで、「それは、長く機械を見てきたあなただからでしょ」と思った人もいるかもしれません。

たしかに、そう言われると返す言葉はないです。

でも、たぶん誰でも、似たような経験はあるんじゃないかと思うんです。家族の「ただいま」の声だけで、今日何かあったなと分かる。仲のいい同僚の背中を見ただけで、機嫌が悪いのが分かる。

それって、特別な才能じゃないですよね。いつもの相手を見ているから、分かるんです。

最初は何も感じなくていいと思います。見ているうちに、相手の「いつも」ができてくる。違いに気づけるのは、そのあとです。

話すか黙るか

感じ取った結果、声をかけることもあります。黙ることもあります。

集中している人に、わざわざ雑談を持ちかける必要はないですよね。忙しそうなら、要件だけ短く。

機械の兆候だって、気づいたその日に手を打つとは限らないんです。気にかけておく。様子を見る。人も同じで、気づいておくこと自体に意味があると思っています。

黙るのは、会話から逃げているわけじゃありません。相手を見た上での、ひとつの判断です。

弾むより

年の離れた人と話が弾めば、それはそれでいいことです。

無関心でいるよりは、ずっといい。

でも、会話の量で関係が決まるわけではありません。簡単なやり取りでも、相手を理解した上の一言なら、ちゃんと届くんです。

年上でも、年下でも同じです。何を話すかより先に、相手を見る。会話は、その結果でいい。

明日の数秒

もしよかったら、明日、職場で誰かに話しかける前に、ほんの数秒だけ相手を見てみてください。

いま何に集中しているのか。いつもと違うところはないか。

それから、話すか黙るかを決める。話すなら、何を話すかを決める。それだけです。

最初は、何も分からなくても大丈夫です。見ることを続けるうちに、少しずつ見えてくるものがあると思います。

無理に会話を増やす必要はありません。見ることなら、話すのが苦手な人にもできますから。

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